
痛みがあっても、うまく歩けなくても、朝が来るのが怖くても、それでも、ぼくは、今日も「言葉」に向かう。
アーロンチェアに腰掛け(先天性の骨格異常で毎日、腰の激痛に耐えている)、光線治療をやり、そのまま、脳の回復時間に当て、起床後、また、少しずつ、文章を打つ。
言葉を綴ることは、ぼくにとっての「治療」であり、「祈り」であり、「希望の再確認」だった。誰かに認められなくても、読まれなくても、ぼくが綴った言葉は、“確かにここに生きた”という証になる。「こんな話、誰にも伝わらないかもしれない」「また、傷つくかもしれない」そう思うことも、ある。
でも、どこかに、ほんの一人でも──かつてのぼくのように、光が見えず、呼吸が浅くなっている人がいるなら、その人の小さな足元を照らす火になれたらと思う。

ぼくが「再起動」できたのは、言葉を綴ることを、あきらめなかったから。誰かに届くように書いたわけじゃない。ただ、自分を見つけるために綴ってきた。でも、結果として──その言葉は、回り回って、「あなたに向けた言葉」になっていた。
巻末ことば|『銀牙伝説WEED』より
「オレ達には、自分だけ助かりたいために、仲間を見捨てるようなヤツはいない」
牙をむかなくてもいい。奥羽の熊犬”銀”のように「絶・天狼抜刀牙」を使わなくてもいい。でも、“隣にいる誰か”を守りたいと願う、その思いがあるなら──それで、じゅうぶんだ。