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『銀牙−流れ星銀−』じっ様はなぜ生還できたのか?|“逆算思考”と戦術の正体を解説

2026年1月14日

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『銀牙−流れ星銀−』じっ様はなぜ生還できたのか?|“逆算思考”と戦術の正体を解説

2026年1月14日



寿沢 双子峠



序章


山に生きる者だけが知る静けさがある。
雪の降り始める前、森が息を潜めるように沈黙するとき、
その沈黙の奥に、獣の気配が生まれる。

じっ様は、崖から落ち、熊に追われ、血を流しながら夜を越えた。

―― 何十年....何百年と血ィ流して伝えた猟師の経験

それは、「生き残る者は、“考える者”だ」ということに他ならない。

じっ様は、人の感覚を越えて
“論理だけで死から逆算する” 老狩人だ。

感情を捨てたのではない。
“生還のための計算” こそが
生き述べる術だということだ。

双子峠の所有者は、じっ様だ。
それは、彼にとって庭同然を意味する。

彼は山のどこにいても、
風向き、湿度、臭気、音の反射から
獣の位置と動きを“式のように”導き出すことができた。

村では、
無愛想で酒癖の悪い頑固じじいと呼ばれていても、
山は知っていた。
彼こそが、山で最も死に近く、そして最も死から遠い男だと。


第一章 異常との遭遇


ある冬の朝、山肌が静かに震えた。
雪ではない。
風ではない。

“化け物の歩幅”だった。

じっ様は一目で悟る。
これは普通の熊ではない。
背筋が凍るような、あの独特の山の圧。

そして目にした。

赤カブト。

じっ様は驚かなかった。
驚きより先に、”解析”が始まった。

歩幅、重心、爪牙の角度。
風下に立とうとする位置どり。
雪の沈み方。
音を殺す足運び。

一瞬で理解した。

こいづ、人間を“学んどる”

仲間の猟師は銃を撃つが、いずれも空砲に終わる。
赤カブトは近づかない。

じっ様だけが呟いた。

ヤツぁ わしらの銃の射程距離を知っとる・・・

その瞬間、全てが“戦い”から“知能の対決”へと変わった。


第二章 アルゴリズムの解析


じっ様は誰よりも早く、赤カブトの行動パターンを読み解いていった。

・銃の射程距離に入らない
・熊の弱点である“身体の中心線”を守るために銃が描く射線から外れる
・風向き、視界を常に計算に入れる
・沢の頂上付近に自分の足跡と臭いを残し、木の上に飛び移る
・夜でも周りがよぐ見えるから人間は尾根づたいに歩く

それは「熊の本能」ではなかった。
明らかに、“戦闘特化型アルゴリズム”だった。

普通の人間なら恐怖で動けなくなる。
だが、じっ様だけは違っていた。

赤カブトが距離を詰めるたび、
脳内で弾道計算の線が走る。

すべてを、じっ様は一瞬で数値に変換する。

老人の目はかっと見開き、
頬の傷跡がわずかに震える。

これが、極限で磨かれた
MBA的ロジックすら凌駕する
“命のロジカルシンカー”
五兵衛の戦闘モードだった。


第三章 父シロの死闘と継承


熊犬シロと赤カブトの戦いは、誇りなどでは決して語れない。
“遺伝子に刻み込まれた本能”
牙をむき合った、あの一瞬だった。

息子リキが駆けつけると、
父シロは重症を負いながらも
最期の言葉を伝えた。

「もっと自分を磨け!! そしてもっともっと強くなるんだ
 主人を頼むぞ⋯リキ!
オレは今お前の父であることを誇りに思うぞ」
「父さん⋯あきらめないで!!」
「あきらめなどない・・・熊犬はその一瞬まであきらめなどないのだ‼」

シロは、後ろ脚で枝を蹴り飛ばした。
――それは、自らの命と引き換えに
赤カブトもろとも深い谷底に沈んでいくことを意味した。

そして、シロは、自分の身を犠牲にしてリキとじっ様を救った────

戦いとは、論理だけでは救えない。
細胞と本能が、時に論理を超える。


第四章 裂け目の夜


右足をナタで切断したじっ様と熊犬リキ

シロが散ってから5年の歳月が過ぎた。
そして・・・あのときと同じ雪深い日。”運命の双子峠”。

じっ様とリキが赤カブトから逃れて、1週間。
そこは、わずかな岩の裂け目に過ぎない。
風が骨を刺し、雪が吹き込み、
飢えと寒さは想像を絶していた。

リキは深手を負い、体温は、どんどん奪われていた。
じっ様自身も、赤カブトとの死闘で
右足をズタズタに引き裂かれ歩くこともままならずだった。

このままじゃ──共倒れだ。リキ・・・

判断は、一秒遅れただけで死に直結する。
じっ様は、己の身体の限界も、裂け目の構造も、雪の積もり方も、
そして何より、
リキが生き延びる確率 を弾き出した。

人間では、脚を取られて深い雪の中を走れない。
犬は、走れる。
村は近い。村人全員は、リキをよく知っている。
行き着けば救援が来る。

その計算は、ただひとつの結論を弾き出した。

じっ様は静かに、ナタを抜いた。
刃が月明かりをひと筋だけ返した。
その光が“選択”の重さを示していた。

小さなうめき声と、
肉が裂け、骨が砕ける音だけが、風に吸い込まれて消えた。

じっ様の脚が、雪の上に落ちた。

喰え!喰うんだ リキっ!! 

じっ様は、自らの肉の塊を掴み、
その拳をリキに口に押し込んだ。

わしのひと握りの肉片でもおめえの体力をいくらか回復させるべ
村まで生きて帰るんだ!!

おめえは体力をちっとでもつけて村へ知らせに帰えるだ

けれど、リキは喰わなかった。
主人の肉は喰えなかった。
初めて命乞いをするような声で泣きじゃくった。

リキよ.....ほだな やわな犬に育てた覚えはねぇぞ!!

血の匂いに誘われる赤カブト。
その気配が近づくたび、
じっ様の脳内では“死の確率”が指数関数的に跳ね上がっていく。

“今動かなければ、二人とも確実に死ぬ” と弾き出していた。

それが、老狩人が弾き出した結論だった。


雪の底を押し上げるような、あの獣の圧。
一歩ごとに、じっ様の脳内で“死の確率”が跳ね上がり、
生き残るための計算式は、とうに限界点を迎えていた。

自らの脚を切り落としてまでリキを生かそうとした判断は、
もう後戻りできない“線”を越えた証だった。

そして次の瞬間──
岩の裂け目から、赤カブトがふたりを見つける。

一瞬で空気が凍り、
リキがかすかに震え、
じっ様の目がわずかに開く。

このあと始まる戦いは、
もはや老狩人の計算では止められない。
あの山で“運命”と呼ばれるものが、
ふたりを残酷な場所へ押し流していく。

次回──
リキの咆哮が、谷を裂き、
寿沢の闇が口を開ける。
そして、銀の運命が、ここから始まる。

 👉️【第4回】:『銀牙−流れ星銀−』熊犬リキ最期の闘い──寿沢の谷へ消えた魂

熊犬リキ 銀
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📀『銀牙-流れ星 銀-』テレビアニメが終了したのが1986年。当時近所のレンタルビデオ店では総集編しか置いてなく、全編とおしての視聴叶わず(本放送当時、我が家では、ビデオデッキの購入に、断固反対されていた)。DVDが発売されたのは、放送終了から22年もの歳月を要した、2008年のこと。予約開始後、即ポチしたことを昨日のように覚えている。

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藤次郎Tojiro

Tojiro

子どもの頃、家でジャンプが出禁になっても、『銀牙』や藤子作品だけは読み続けていた。その頃の“物語の匂い”が、ぼくの根っこをつくっている。うつとの長い旅を経て、“こころの余白”の大切さを知り、いまはドラマ『相棒』の奥にある気持ちの揺らぎや、痛みのレイヤーをそっと読み解いている。原点の作品を行き来しながら、人が立ち上がっていく物語を、静かに追いかけています。

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