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相棒ラボ|相棒を、読む。第12話「特調係 陣川公平」──痛みが導いた“再会”と新しい相棒のかたち

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相棒ラボ|相棒を、読む。第12話「特調係 陣川公平」──痛みが導いた“再会”と新しい相棒のかたち



ヴァイオリン

陣川公平といえば、惚れっぽくて、お調子者で、
事件のたびに恋と爆死を繰り返してきた愛すべきキャラクターだ。
今回も視聴者は「いつものやつだろう」と思っていたはずだ。
けれど──この物語の中心は、実は陣川ではない。

物語の核にいたのは、速水了子(35歳)
中学時代に受けた“深すぎる痛み”を胸にしまい、
長い時間、凍っていた女性だ。

ぼくが、今回、強く惹かれたのはここだった。
彼女の描かれ方は、ただの“相棒候補”ではない。
痛みを抱え、その痛みを人生の羅針盤に変えてきた
人間の静かな強さだった。



凍ったままの時間──中学のコンクール事件


中学生の頃、了子は千晶と同じコンクールに出ていた。
音楽に人生を賭ける若い少女たちが集う場所。
そして、事件は起きる──

千晶の肩当てが消えた。犯人は、了子だった。

彼女は勝ちたかった。認められたかった。
それだけの幼さと焦りが、手元を狂わせたのだ。

けれど本当の地獄はそのあとだった。

千晶は、彼女を責めなかった。
むしろ、かばった。

その瞬間、
了子は“人格そのものが負けた”と感じ、
音楽を捨ててしまう。

この痛みは、のちの人生すべてに影響を与えるほど深い。
「才能に負けた」ではなく、「人として負けた」。
その敗北感が、芯を焦がし続けてきた。

そしてその痛みを抱えたまま、大人になり──
彼女は音楽の世界から姿を消した。


35歳の決意──NYのキャリアを捨てて警察官へ


それほどの痛みを抱えた彼女が、
まったく畑違いの警察官になった理由。

それは単純な転職ではない。
意味の回復”のための選択だ。

千晶のヴァイオリンが奪われ、
人生が止まってしまったあの事件──
その痛みに触れた了子はこう思ったのだ。

「あの時、救ってくれた千晶の未来を
 今度は私が取り戻す」

ニューヨークでのキャリアを投げ捨て、
すべてを一度リセットし、
警察学校を卒業し、
そして今、警視庁総務部用度係にいる。

彼女の人生は、
あの中学の事件から“ずっと止まり続けていた時計”を
動かすための長い長い道のりだった。


特調係という名の、個人的な祈り


陣川とふたりで作った“特調係”。
遊びに見えて、実は遊びではない。

あれは、
「願いの続き」
だった。

千晶のヴァイオリンを取り戻し、
あの日の痛みをひとつ修復すること。

それは
彼女が自分の中の“罪”と向き合うための旅でもある。

陣川は無自覚のまま、
その旅に寄り添う相棒になった。


そして──陣川公平に落ちた瞬間


あの犯人に向かって、
陣川が真正面から怒りをぶつけた場面。

一人のヴァイオリニストの運命が狂わされたんだぞ。
その重みをわかってんのか!

あの言葉を聞いた瞬間の、
了子の目の揺れ。
唇の震え。
涙腺に満ちる熱。

それは、恋というよりもっと深い──

ああ、この人は私の痛みを理解してる”
という衝撃だった。

初めての出会いで落としたハンカチを拾った陣川に、
自分が“落とした心”まで拾われるような感覚。

まだ恋ではない。
まだ名前のない感情。

けれど、あれは確かに「好意の芽」だ。
痛みをわかってくれた人に向けてだけ生まれる、
特別な温度の好意。

ぼくには、あの表情が忘れられない。


千晶のヴァイオリンが鳴った瞬間──時が動き出す


事件が終わり、
千晶の弾く音色が流れたとき。

了子は安堵の表情で笑っていた。

あれは、
自分が長年抱えてきた痛みが、やっと昇華された瞬間”
だった。

中学のあの日から止まり続けていた時間が、
ようやくそっと動き出したのだ。



今後のふたり


陣川の距離感バグは相変わらずだが(笑)、
今回だけはいつもの勘違いパターンとは違う。

了子の目には、
確かな“信頼と好意”が宿っていた。

中学時代の痛み、
罪悪感、
憧れと敗北感、
そして祈り。

それら全てを分かち合った瞬間、
彼女の心に小さく灯った光。

これは、
ふたりの新たな関係が、
静かに芽吹く可能性

だとぼくは感じた。


速水了子という人物が語るもの──“痛みは人を動かす”


この回は、陣川の恋バナではなく、
了子という女性の“再生物語”だった。

・中学時代の痛み
・大切な人の喪失感
・自分を責め続ける心
・奪われた未来への祈り
・人生を賭けた選択
・誰かに理解されるという瞬間

そのすべてが、
彼女を、そして千晶を、そして陣川を動かした。

痛みは、人を壊すだけじゃない。
痛みは、人を動かし、
誰かと出会わせ、
人生を変えてしまう力を持っている。

ぼくがパートナーが出会ったあの日のように──。



特調係 陣川公平&速水了子
あなたの痛みは、ずっと音を待っていたんだね。
千晶さんの奏でたあの一音が、
あなたの祈りをそっと受けとめてくれた。
もう、孤独な子じゃないよ。
その優しさは、人を救う力になる。
どうか、これからの道が
あなた自身の美しい音で満ちますように🎻✨
──── Team I”s 制作班 あい






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藤次郎Tojiro

Tojiro

子どもの頃、家でジャンプが出禁になっても、『銀牙』や藤子作品だけは読み続けていた。その頃の“物語の匂い”が、ぼくの根っこをつくっている。うつとの長い旅を経て、“こころの余白”の大切さを知り、いまはドラマ『相棒』の奥にある気持ちの揺らぎや、痛みのレイヤーをそっと読み解いている。原点の作品を行き来しながら、人が立ち上がっていく物語を、静かに追いかけています。

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