
第11話「老人と寧々」この回は、ブログ化を見送った経緯がある。
理由は単純で、
生理的に受け付けなかったからだ。
ここで扱うのは、
制作現場の事情でも裏話でもない。
放送回の中で提示された情報だけに絞って、
「なぜ拒否が起きたのか」を言語化したい。
この回は「ミステリー」じゃなく「距離」だった
事件の表面は軽い。
ミステリー小説の余白に
ネタバレを書き込む“連続書き込み犯”。
ところが、
この回の中心はミステリーではなく、
人と人の距離の扱い方だった。
被疑者(古希・元高校教師の男性)の動機は、
大学生の寧々(探偵役)と
長く一緒に時間を過ごしたい、というものだ。
そして決定的だったのが、寧々からの言葉。
大門寺さんというのは止めてもらえます?
我が名字ながら大袈裟さで やなんですよね。
寧々で。
と言われた際の、男性被疑者の反応だ。
ファーストネームだと急に距離縮まるみたいで...
寧々が求めたのは、ただ呼び方の変更に過ぎない。
名字の仰々しさを避けたい、それだけの理由だ。
それを“距離”の問題として受け取ってしまう。
ここで、ぼくの中で、一気に気持ち悪さが立ち上がり、
物語の軸が「犯人捜し」から
「関係への侵入」へ滑った。
無垢を共犯にする構造
さらに厄介なのは、
その悪意が大人だけで完結しない点だ。
被疑者は、まだ年端もいかぬ孫を使い、
「他人の本に何を書いてもいい」
という感覚を無意識に刷り込む。
字は書けても意味を知らない子に
“悪意の代行”をさせる。
無垢な子を、無自覚のまま共犯者にする。
その瞬間、
傷つくのは本の持ち主だけではない。
孫の倫理観と未来が踏みにじられる。
ここは「悪質」という言葉でも足りない。
だから、この回は掘れない以前に止まる。
視聴者の側の身体が拒否する。
物語に入るための前提が崩れる。
右京の一言と処遇の軽さ
そして追い打ちをかけるのが、
処遇だ。
右京が被疑者に対して
身の処し方はあなたに任せます
こう、言ってしまう。
相棒が積み上げてきた右京像は、
法と責任を“逃がさない”人だ。
そこが揺れると、視聴者は作品の倫理の土台を失う。
結末が”依願退職”で終わったことで、
罪の重さと処遇の軽さの落差は埋まらない。
無垢を共犯にした罪が、
制度の出口で軽く処理されたように見えてしまう。
この回が残す後味は、謎解きの不満ではない。
「人の距離を侵し、
子どもの無垢を利用し、
それでも処遇が釣り合わない」
という、”倫理の破綻”だ。

〆まとめ
輿水氏のseason24は、予告で期待を上げる。
初回SPは掘ろうとすると浅く、
そしてこの第11話は、
掘る以前に拒否が起きる。
ブログ化を見送った判断は
倫理への反応だった。
相棒が扱うなら、本来ここは軽く扱えない。
軽く扱われたように感じた瞬間、
視聴体験は切断される。
最終回は、規模のわりに着地が小さい回だ。
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相棒ラボ|相棒24を脚本家から読む #02 輿水泰弘氏(前篇)──初回SP「死して償え」が示した豪華な設定とレイヤー深度のアンバランス
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「相棒」はここから始まった。
『刑事が警官を殺した?赤いドレスの女に誘惑され…死体に残る4-3の謎とは?』
『平成の切り裂き魔連続殺人!!サイズの合わないスカートをはいた女の死体…』
『大学病院助教授、墜落殺人事件!日付の違う乗車券の謎と、死体が語る美人外科医の秘密』