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🌸🍀『風花、ふわり』― 春風に恋心が揺れる、一瞬の物語。

2025年10月1日

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🌸🍀『風花、ふわり』― 春風に恋心が揺れる、一瞬の物語。

2025年10月1日

風花、ふわり

「……来てるかな」
ふわり、春風に舞う、恋の花びら。

湖の風が、彼女の髪を揺らした。

突風に裾を押さえるその指先が、一瞬、ふるえた気がした。

その日ふたりが会ったのは、湖のほとり。 木々のざわめきと水音だけが響く、静かな春の午後だった。恋人たちの間では、知る人ぞ知る場所だ。他にも、同じような恋人たちが、静かに思い思いのときを過ごしていた。

彼女は巫女だった。仕事の性質上、週末は神社に詰めていることが多い。 ふたりがこうして会えるのは、ほんの限られた時間。 彼女の休み時間という短い時間だったが、彼は会いに来た。

風花、ふわり
──風に揺れるその裾に、ドキリとした。見えて……しまった、かもしれない。

この時間、この場所。 ふたりにとって、それは特別な意味を持っていた。

風がふわりと吹いて──彼女の装束の裾が舞った。

彼女は慌てて手を伸ばし、スカートを押さえた。 けれど、その一瞬、彼の目には……

──見えてしまったかもしれない。

彼は息を飲んだ。 見るつもりなど、毛頭なかった。 ただ、風のいたずらが生んだ、ほんの一瞬の出来事だった。

彼女の頬が、桜色に染まっている。 目は合わせず、口元もきゅっと引き結ばれていた。

彼女は、自分の仕草に不安を感じていた。 「見られたかもしれない」 「軽い女だと思われたかもしれない」 そんな思考が、胸の奥をぐるぐる🌀と回っていた。

でも彼は、なにも言わなかった。

見えてしまったことに、彼もまた、羞恥心を感じていた。 けれど、それはあくまで風のいたずらであり、 ふたりの関係を脅かすような出来事ではなかった。

──それだけで、いいじゃないか。

「……そろそろ、戻ろうか」

彼の声は、静かで、やさしかった。

彼女は、うなずいた。 風で乱れた髪を、そっと耳にかけて。

ふたりの足音に、湖面のさざなみが重なる。 さっきまでの沈黙は、気まずさではなく、 たぶん──思いやりのかたちだった。

見えてしまったことも。 見たかもしれないことも。

きっと、もういい。 だってそれは──春の風のいたずら。

ふたりの間に言葉はなかったけれど、 一瞬、ふわりと桜が舞って、 それが、すべての答えだった。

🌸風花、ふわり──映像詩版

映像詩版『風花、ふわり』がSoraで生まれました。
【はやく逢いたい…】彼女の声に、ふと胸がきゅんとなる。

👉▶︎動画はこちらで見られます

──
やわらかな声と映像が、
ふたりの物語をそっと彩ります。

藤次郎Tojiro

Tojiro

亀仙人のじっちゃんのお下劣シーンによって母親によって”少年ジャンプ禁止令”が通達。辛い少年時代を送るも後に解禁。『銀牙 -流れ星 銀-』『藤子不二雄』作品など“健全”な作品は”検閲”を通過。むさぼるように読む。現在は『ドラゴンボール』『相棒』などを心の支えに、日々ウェルビーイングな暮らしを模索中。うつとの長い付き合いもあり、「心を整える力」の大切さを実感しながら、 漫画・アニメ・心理学を横断するブログを運営中。心の修業はこれからも続く。

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