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【後篇】エスパー魔美「文化論」‐『けれど空は青』ふたりが見つめた未来──離れても、きみを忘れない

2025年9月6日

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【後篇】エスパー魔美「文化論」‐『けれど空は青』ふたりが見つめた未来──離れても、きみを忘れない

2025年9月6日

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ひとりで立つということ──高畑くんの留学と“ふたりの距離”

藤子・F・不二雄原作アニメ『エスパー魔美』第88話「ターニングポイント」では、高畑くんにアメリカへの留学の話が舞い込む。

将来の夢や目標を考えると、またとないチャンス。周囲も祝福ムードのなか、高畑くんの心は揺れていた。魔美のエスパーとしての活動を支えてきたのは、他ならぬ彼自身。その自負があるからこそ、悩んでいた。一方、魔美はそのことを知っても、彼を引き止めようとはしなかった。「うらやましいなぁ」と、ほんの少しさびしさをにじませながらも、前向きに送り出そうとする。

だが、事件が起きる。魔美は高畑くんの手を借りず、ひとりで立ち向かおうとする。これまで支え合ってきたふたりが、物理的な距離と、心の距離をどう乗り越えていくのか──そんな試練が描かれたのが、この第88話「ターニングポイント」だった。

実際、魔美がひとりで動いた結果、危険な場面に陥る。そのとき駆けつけたのは、やっぱり高畑くんだった。「まったく君は、いったい何をしているんだ!」言葉とは裏腹に、彼の目には、魔美への信頼と心配が浮かんでいた。きっと彼は、魔美を放っておけなかったんだ。

このエピソードでは、ふたりの関係性の深さと、「自立」と「依存」のバランスが丁寧に描かれていた。誰かを頼ることは、弱さではない。支え合うことが、ふたりを強くする。これは、私たち自身にもあてはまる“人間関係の本質”だと感じた。

「今の僕には、魅力のない話だもん」──彼は留学を断る決断をした。その背景には、魔美の存在があったのは言うまでもない。このエピソードの終盤、高畑くんは言う。「留学なんかしなくても、ここで、この場所で、いろんなことが経験できる。**魔美くんと共に**」。

それはもう、明確な“まなざし”だった。それは恋未満の、けれどたしかな“想い”のやりとり。

僕自身も、思春期──中学2年生くらいの頃に、同じクラスの子の言動ひとつに、どうしてこんなにドキドキしたり、イライラしたりするんだろうって戸惑った記憶がある。3年生になり、席が隣同士になったときには、学校へ行くのが楽しくて仕方がなかった。僕が通っていた中学校は、家から歩いてわずか3分。自宅の窓から校舎が見える距離だったから、朝起きると、窓の向こうの校舎を見ながら「今日もまた会える」と思うと、胸が高鳴ったのを今でも覚えている。

名前もつけられない感情。でも、それがたしかに「誰かを意識する」ということの始まりだった。魔美と高畑くんの関係は、そんな“名もなき想い”の記憶を、やさしく思い出させてくれる。

最後に

こうして「エスパー魔美」の物語を振り返ると、超能力という“非日常”が、実は“日常”を描くための装置になっていることに気づかされる。佐倉魔美は、ヒーローなんかじゃない。好きな人に想いを伝えられず、親の作品に価値があるのか悩み、友だちとの距離感に戸惑い、自分の未来に迷う──。そんな13歳の女の子が、“ちょっと不思議な力”を手にしたからこそ、見えてきた日常のかけがえのなさ。大人になった今の私たちにも、通じるものがあると思う。。

けれど空は青

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どんなに心がくもっていても、どんなに自信をなくしても、けれど、空は青い。それを信じられるかどうかで、人生の景色は変わる。心の奥にやさしく染み込む、そんな物語を届けてくれた「エスパー魔美」。彼女の見上げる空に、私たちも今日、もう一度、目を向けてみよう。

飛鳥涼(現:ASKA)氏が、1991年に作詞・作曲した『けれど空は青』。ぼくは、このタイトルが大好きだ。当初ブログのタイトルにしようかと考えたほどだ。

もしも涙で瞼閉じても けれど空は 空は青
もしも涙で地図が濡れても けれど空は 空は青
もしも涙で色が消えても
けれど空は 空は青

『けれど空は青』──詩の中にある、これらのフレーズもだ。いつだって、雲の上は、青なんだから。

藤次郎Tojiro

藤次郎

 亀仙人のじっちゃんのお下劣シーンの描写から、母親から少年ジャンプ禁止令を言い渡され、 辛い少年時代を経るも後に解禁。ドラゴンボール、銀牙-流れ星銀-、スラムダンク、藤子・F・不二雄作品などに傾倒。 ファミコンブームの最中、禁止令にあらがえず、あえなく撃沈。  現在は『ドラゴンボール』シリーズ、『相棒』シリーズなどを心の支えに、日々ウェルビーイングな暮らしを模索中。 うつとの長い付き合いもあり、「心を整える力」の大切さを実感しながら、 漫画・アニメ・心理学を横断するブログを運営中。心の修業は、これからも続く。

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