元気がなくて、なんとなくYouTubeを眺めていた。
すると、ふいに流れてきたのが 『お金がない!』
最終回のひとつ前。
あの音が鳴った瞬間、身体が先に反応した。
黒い顔が、さらに黒くなる瞬間
車から足を踏み出す。
カメラは下から。
逆光の中、まだ表情は見えない。
一拍おいて、
ぱっと顔が見える。
織田裕二 の、
あの黒い顔が、さらに精悍に“黒く”なる瞬間だ。
勝ち誇る顔じゃない。
強がる顔でもない。
もう疑っていない人の顔。
だから、しびれる。
このドラマ、顔が黒い奴ばかり出てくる
思い返してみると、このドラマは“黒い”。
- 松崎しげる
- 東幹久
権力側の白さじゃない。
清潔感のための白さでもない。
汗をかいて、
現場に立って、
簡単に綺麗にならなかった人間の色。
だから、織田裕二の黒さが浮かない。
同じ地平に立っている。
底から始まる物語
健太郎の出発点は、あまりにも低い。
- 家賃3,920円の四畳半
- ドブ川に浮かぶ家
- 両親は死亡、多額の借金
- 勤務先は倒産、給料は入らない
これは成り上がり譚じゃない。
生き延びる話だ。
焼き肉屋と「スクランブルだぞおお!」
健太郎には、まだ小学生の弟がふたりいる。
給料日には、決まって駅前ロータリーに集合して焼き肉屋。
月に一度の贅沢。
でも、倒産した日。解雇された日。
給料は入らない。
弟たちには言えない。
そこで出る言葉が、
「スクランブルだぞおお!」
食い逃げ。
追いかけてくる店長。
振り切る三人。
後日、給料が入っても、
借金取り(カクジさん&タバタ)に
焼き肉屋で全部持っていかれる。
無一文。
それでも、また言う。
「スクランブルだぞおお!」
これはギャグじゃない。
尊厳を守るための呪文だ。
生存戦略としての奢り
たまに焼き肉屋には大沢もいる。
「今日は、このお兄さんが全部奢ってくれるんだぞ」
弟たちは大喜び。
これも美談じゃない。
倫理の話でもない。
崩れない配置を探した結果だ。
生きるって、
いつも正解を選ぶことじゃない。
壊れないための選択を積み重ねることだ。
二人の分岐点
健太郎は、
最初は弟たちを食わせるために仕事にのめり込んだ。
途中から、仕事そのものの面白さにのめり込んでいく。
その結果、
弟の小さな変化に気づかなくなる。
ゲームボーイの万引き。
身柄を引き取りに行ったのは、健太郎ではなく、美智子だった。
一方で大沢は、
エリートの座を捨て、
土木工事の現場に降りる。
一から始める人生。
一年後、現場主任に。
上へ行った健太郎。
下へ降りた大沢。
どちらも逃げていない。
音が、すべてを繋げる
このドラマの“来た感”を決定づけているのが、音楽だ。
作曲は 服部隆之。
金管とストリングス。
オーケストラ編成。
煽らない。
盛らない。
ただ、歩幅を前に揃えてくれる音。
YouTubeで流れていたあの曲は、
サントラ収録の「BIG CHANCE」だった。
30年前、何度も聴いた音。
いまもスマホに入っている音。
湯気みたいな会話で、核心を突いてくる
このドラマは、湯気みたいにゆるいのに、
気づいたら核心を刺してくる。
元気がないとき、
ダブルチーズバーガーを食べて、
この音を聴く。
それでいい。
生き延びてきた証拠が、ここにある。
📚あの四畳半では、いつもパンツ一丁だった...。
📀 『お金がない!』DVD-BOX
- ▼ Amazon 👉 Amazonで見る
- ▼ 楽天 👉 楽天で見る
-
▼ Yahooショッピング
👉 Yahooショッピングで探す