
この回は「事件」じゃなくて「人間」を描いていた
今夜の『相棒 season24』第13話 「信用できない語手」……
リアタイで見たあと、胸の奥に“未完”の感覚だけが残った。
事件が終わったわけじゃない。
浦神鹿が死んだわけでもない。
すべてのピースが揃っているようで、揃っていない。
その“欠けた感じ”こそ、この回の本質だと思った。
相棒は「事件」ではなく「人間」を描くドラマ。
今回はその原点を、ものすごく静かに、深く貫いてきた。
浦神鹿──信用できない語り手としての“自分”
右京が最初に突きつけた言葉。
あなたには向いているかもしれない。嘘つきだから
浦神鹿が読んでいたのは、“信用できない語り手”の本。
語り手=犯人という構図を、自分の生き方ごと演じていた。
そして浦神鹿は、小説家ではなく、
自分自身を“物語化する犯罪者”だった。
ネタバレは最初から画面に置かれていた。
10代の浦神鹿を作った「二つの火事」
・喫茶店が燃えて両親が死んだ
・特殊な共同体が暮らすアパートも燃えた
・生き残ったのは浦神鹿ひとりだけだった
炎だけが、彼の人生の形を残した。
右京に語った“身の上話”は、
どこまでが嘘で、どこからが真実なのか。
本人すら、もう境目を失っているように見える。
大切なものを破壊して、唾棄すべきものを愛でる。
この台詞は、浦神鹿の原点に触れた瞬間だった。
養父の家を燃やした夜──真実はどこにも書かれていない
庭師・上村の遺書。
日誌と筆跡がまったく一致しない。
浦神鹿は言った。
筆跡鑑定の個人内変動の範囲内ってやつです
この台詞こそ、“嘘つきの論理”。
真実を語らない語り手は、いつも軽く笑う。
でも、右京だけは、その薄皮の奥を見ていた。
月詠という“投影の器”
浦神鹿の養子・月詠。
中性的な顔立ちで、言葉もほとんどない青年。
浦神鹿は後ろから抱きしめるように触れていた。
あれは“家族”ではなく、“自分の延長”としての存在。
血のつながりではなく、
自己の構造を受け継がせるための器だった。
そして浦神鹿は、月詠を殺している。
浦神鹿の物語が“制御不能になった瞬間”がそこにあった。
西田汐事件──副テキストとしての“作中作”
西田汐の日記には、愛人・徳永雅への思いは一行もない。
「恋愛感情が動機」という公式見解は、
浦神鹿が作った虚構だった。
自らの捜査に役立ててもらおうと、
浦神鹿が、”警視庁に寄付”した
最新型の3D検視アナライザーで見つかった入れ墨。
Unreliable narrator(信用できない語り手)
右京へのメッセージ。
浦神鹿は「自分の犯行を暴かれること」まで
物語に組み込んでいた。
彼にとって事件は“作品”でしかない。
公安・松永──唯一の“友だち”の死
松永が浦神鹿を利用しようとした瞬間、
浦神鹿の感情が初めて“人間らしく”爆発した。
友だちのために戦っちゃったよ。こんな気持ちは初めてだ
歪んでいても、それは確かに“情”だった。
浦神鹿は、自分が理解されるとは思っていない。
ただ、右京と薫だけは“特別に扱っている”。
右京と浦神鹿の関係──未完のまま残された“友愛”
浦神鹿の言葉。
だって、友だちじゃないですか
薫は真顔でこう言う。
懐かない犬が懐いてはしゃいでるみたいで……
右京は静かに答える。
浦神鹿は、犯罪をもって友愛を示す、ですか
そして最後。
続きが気になる。それだけです
この台詞が、すべての鍵。
浦神鹿という人間は“まだ終わっていない”。
物語の幕は下りていない。
結び:これは完結回ではなく“序章”
浦神鹿の死亡報告は不確定。
月詠殺害は、浦神鹿の世界が崩れ始めているサイン。
右京は次に来る“物語”を待っている。
浦神鹿はまた現れる。
その時、右京は彼をどう受け止めるのか。
これは未解決事件ではなく、
未完の人間・浦神鹿を読むための第1章だった。

──── Team I”s 制作班 あい
📚小説版でじっくり楽しみたい人へ
📚 相棒 season23 ノベライズ(朝日文庫)
上巻には「警察官A」こと高田創くんの交番配属エピソードも収録!
小説ならではの心理描写が深くて、読後の余韻がしみるよ。
📦
上巻・中巻に加えて、下巻 12月5日発売中✍️