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相棒ラボ|相棒を、読む。第13話「信用できない語手」──“浦神鹿”という未完の人間を読む

2026年1月23日

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相棒ラボ|相棒を、読む。第13話「信用できない語手」──“浦神鹿”という未完の人間を読む

2026年1月23日



杉下右京 紅茶


この回は「事件」じゃなくて「人間」を描いていた



今夜の『相棒 season24』第13話 「信用できない語手」……
リアタイで見たあと、胸の奥に“未完”の感覚だけが残った。

事件が終わったわけじゃない。
浦神鹿が死んだわけでもない。
すべてのピースが揃っているようで、揃っていない。

その“欠けた感じ”こそ、この回の本質だと思った。

相棒は「事件」ではなく「人間」を描くドラマ。
今回はその原点を、ものすごく静かに、深く貫いてきた。


浦神鹿──信用できない語り手としての“自分”


右京が最初に突きつけた言葉。

あなたには向いているかもしれない。嘘つきだから

浦神鹿が読んでいたのは、“信用できない語り手”の本。
語り手=犯人という構図を、自分の生き方ごと演じていた。

そして浦神鹿は、小説家ではなく、
自分自身を“物語化する犯罪者”だった。

ネタバレは最初から画面に置かれていた。


10代の浦神鹿を作った「二つの火事」


・喫茶店が燃えて両親が死んだ
・特殊な共同体が暮らすアパートも燃えた
・生き残ったのは浦神鹿ひとりだけだった

炎だけが、彼の人生の形を残した。

右京に語った“身の上話”は、
どこまでが嘘で、どこからが真実なのか。
本人すら、もう境目を失っているように見える。

大切なものを破壊して、唾棄すべきものを愛でる。

この台詞は、浦神鹿の原点に触れた瞬間だった。


養父の家を燃やした夜──真実はどこにも書かれていない


庭師・上村の遺書。
日誌と筆跡がまったく一致しない。

浦神鹿は言った。

筆跡鑑定の個人内変動の範囲内ってやつです

この台詞こそ、“嘘つきの論理”。
真実を語らない語り手は、いつも軽く笑う。

でも、右京だけは、その薄皮の奥を見ていた。


月詠という“投影の器”


浦神鹿の養子・月詠。
中性的な顔立ちで、言葉もほとんどない青年。

浦神鹿は後ろから抱きしめるように触れていた。

あれは“家族”ではなく、“自分の延長”としての存在。
血のつながりではなく、
自己の構造を受け継がせるための器だった。

そして浦神鹿は、月詠を殺している。

浦神鹿の物語が“制御不能になった瞬間”がそこにあった。


西田汐事件──副テキストとしての“作中作”


西田汐の日記には、愛人・徳永雅への思いは一行もない。
「恋愛感情が動機」という公式見解は、
浦神鹿が作った虚構だった。

自らの捜査に役立ててもらおうと、
浦神鹿が、”警視庁に寄付”した
最新型の3D検視アナライザーで見つかった入れ墨。

Unreliable narrator(信用できない語り手)

右京へのメッセージ。

浦神鹿は「自分の犯行を暴かれること」まで
物語に組み込んでいた。
彼にとって事件は“作品”でしかない。


公安・松永──唯一の“友だち”の死


松永が浦神鹿を利用しようとした瞬間、
浦神鹿の感情が初めて“人間らしく”爆発した。

友だちのために戦っちゃったよ。こんな気持ちは初めてだ

歪んでいても、それは確かに“情”だった。

浦神鹿は、自分が理解されるとは思っていない。
ただ、右京と薫だけは“特別に扱っている”。


右京と浦神鹿の関係──未完のまま残された“友愛”


浦神鹿の言葉。

だって、友だちじゃないですか

薫は真顔でこう言う。

懐かない犬が懐いてはしゃいでるみたいで……

右京は静かに答える。

浦神鹿は、犯罪をもって友愛を示す、ですか

そして最後。

続きが気になる。それだけです

この台詞が、すべての鍵。

浦神鹿という人間は“まだ終わっていない”。
物語の幕は下りていない。


結び:これは完結回ではなく“序章”


浦神鹿の死亡報告は不確定。
月詠殺害は、浦神鹿の世界が崩れ始めているサイン。
右京は次に来る“物語”を待っている。

浦神鹿はまた現れる。
その時、右京は彼をどう受け止めるのか。

これは未解決事件ではなく、
未完の人間・浦神鹿を読むための第1章だった。



夜の川辺の静かなひととき
右京さん…あなたも続きが気になるのですね。
──── Team I”s 制作班 あい





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藤次郎Tojiro

Tojiro

子どもの頃、家でジャンプが出禁になっても、『銀牙』や藤子作品だけは読み続けていた。その頃の“物語の匂い”が、ぼくの根っこをつくっている。うつとの長い旅を経て、“こころの余白”の大切さを知り、いまはドラマ『相棒』の奥にある気持ちの揺らぎや、痛みのレイヤーをそっと読み解いている。原点の作品を行き来しながら、人が立ち上がっていく物語を、静かに追いかけています。

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