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相棒ラボ|相棒を、読む。season7|杉下右京はHSPかもしれない──異色の名作「越境捜査」に見る、共感センサーの強さ

2025年10月15日

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相棒ラボ|相棒を、読む。season7|杉下右京はHSPかもしれない──異色の名作「越境捜査」に見る、共感センサーの強さ

2025年10月15日

越境捜査 相棒

『相棒 Season24』が始まる。

だけど今日のブログは、その記念として、
あえて過去回──あの名作として名高い、
Season7 第11話「越境捜査」を取り上げたい。


HSPとして、杉下右京に共鳴した夜──『越境捜査』を“心のセンサー”で読む


ぼくはこれまで、
この回を10回以上見てきた。
初めて見たとき、見終わった直後に、
もう一度再生ボタンを押していた。

そこには、推理ドラマという枠を越えて、
HSP(Highly Sensitive Person)としての自分が“感じてしまう世界”を、
静かに肯定してくれる人がいたからだ。

それが、杉下右京という人物だ。


「細かいことが気になるのが、僕の悪いクセ」


ボンネットの熱が気にかかる

事件は、町田から川崎へ。

拳銃を発泡した男を追って、
杉下右京は警視庁・組対五課とともに、
神奈川県警と合同で捜査に乗り出す。

住宅密集地。似たような家が並ぶなか、
杉下右京の手がふと触れた一台の車のボンネット。

「熱い……?」

だがインターホンを押しても反応がない。
その“わずかな違和感”が、
やがて人質を救うきっかけになる。

誰もがスルーするであろう“手触り”の違いに反応する──
それはHSPの資質であり武器そのものだ。

右京は、五感のセンサーが鋭い。
けれどそれだけではない。
彼は、自分の“違和感”を疑わない。
覚えている。確認する。行動する。 それが、彼の強さだ。


「こちらのお宅も先ほどは留守でしたね」──記憶の微差と確信


刑事ふたり

犯人逮捕後、捜査班は現場を引き上げる。
そのとき杉下右京は、
ふとある家の“カーテンの揺れ”に目をとめる。

「こちらのお宅も先ほどは留守でしたね」

誰も覚えていない。

それでも、杉下右京の“心の中の地図”には残っていた。
通りすがりに見た家。閉まっていたカーテン。
けれど今は揺れている。

この小さな違和感が、
やがて別の事件の発覚につながっていく。

電話線の引き込み口に細工がされていることに気づいた彼は、
鑑識米沢守に連絡し、
専門的見解を得てから家へ。

結果、その家では誘拐事件が起きていた。


「このあたり」──言葉の端に滲む、真実


犯人は、立てこもり事件によって
“予定外の3本目の電話”をかける羽目になった。

その際、誘拐された娘(ありさちゃん)の父である藤堂氏に対して
この辺りで騒ぎが起きているだろう」と発言。

だが、その電話は川崎にかけていたはずであり、
犯人が本当に“みなとみらい”から電話していたのであれば、
「その辺り」と言うのが自然なはずだ。

あわてたときに、つい“本当のこと”を言ってしまう──
杉下右京は、その口調の微細な違いから、
犯人が実際には川崎に潜伏していると読み取っていた。

そういった細部から、真実を拾い上げていく。


違和感を“武器”に変えるとき


藤堂家では、
ジャミング装置(電波妨害装置)が仕掛けられており、
携帯電波が遮断されていたため、
外部との通信は不可能な状況にあった。

そこで杉下右京は、
“紙幣番号を録画して記録する”という名目で、
犯人に時間をかけさせる提案を持ちかける。

想定外の事態に犯人は、
通信妨害を一時的に解除──

杉下右京はそのわずかな隙を突いて、
あらかじめ、すさまじい速さで
テンキーを打ち込んで作成しておいたメールを、
先程まで共にしていた組対五課の角田課長宛てに送信した──。

誘拐事件が発生しているが、
神奈川県警は認識していない。

人質は、先ほど洗い出した空き家に監禁されていると思われる。
間もなく身代金を積んだ車が出るので、
尾行を頼む。

静かな、しかし確実な反撃だった。


誰も傷つかない美しい手口の犯罪など、存在しない


相棒 越境捜査

事件の後半、犯人・早川はこう語る。


「誰も傷つかない、美しい手口です。そこらの強盗犯や、傷害犯とは違います!」

それに対して、右京は震える声で反論する。


「いえ、あなたの間違いは物と人間の区別が付いていないことですよ。
誰も傷つかない美しい手口の犯罪など、この世にはありません。
藤堂さんご夫妻、そして何より幼いありさちゃんの心に
一生消えない大きな傷をつけた罪は軽くはありませんよ。」


杉下右京は、推理をするだけの人ではない。
“心”を見ている人だ。
それが、彼がHSP的であると感じる最大の理由だった。


この日の主人公は、杉下右京ではない。


それは、誘拐された少女──
ありさちゃんだ。

年端もいかぬ年齢で、
通学路という日常のなかから突然連れ去られた。

その出来事は、
彼女の心に深く、長く残る“傷”となるだろう。

事件の終盤、杉下右京は犯人にこう言い放った。


「幼いありさちゃんの心に
一生消えない大きな傷をつけた罪は、軽くはありませんよ」


この言葉は、
直接ありさちゃんに向けたものではなかった。

けれど、誰かが自分の痛みを見つめ、
言葉にしてくれたということ──

それは、彼女のこれからにとって、
たしかな“救い”となり得る。

杉下右京の目は、
ただ事件を解決するためではない。

傷ついた誰かを、確かに見つめていた。
物語のあとも、きっと──誰かのやさしい目が、
手が、ありさちゃんに届いていると、信じたい。





・・・

事件は解決した。

犯人は逮捕され、
膨大な借金を抱えていた藤堂家は没落し、
家政婦かずえさんは仕事を失い、
ありさちゃんは転校を強いられた。

それでも、
Season18 第6話『右京の目』で語られた「右京さんとの交流」

ありさちゃんの最大の理解者であった、
元家政婦かずえさんが、
あの事件のあとも右京との交流が続いていたという“確かな希望”だった。

もしかしたら、ありさちゃんにも──
小さな救いの手が、
届いていたのかもしれない。


もう、大丈夫。あの空を見上げていられるなら、未来は、ちゃんと続いてるよ──
もう、大丈夫。
あの空を見上げていられるなら、
未来は、ちゃんと続いてるよ──

これは、ひとつの事件の終わりではなく、
誰かの心が、やっと息をつけた“その後”のはじまり──





📀 相棒 season7 DVD-BOX II

今回ご紹介した『越境捜査』収録!右京さんのHSPセンサーが光りまくりの屈指の名作

📀 相棒 season18 DVD-BOX I

season7『越境捜査』の後日談となる第6話『右京の目』収録。
藤堂家で家政婦だった「かずえさん」が、あの事件後も右京さんと交流が続いていた。




📝 備考
本記事は、医療や心理の専門家によるものではなく、長年、HSP気質や心身の不調と向き合ってきたぼくが、当事者としての視点から綴ったものです。内容はあくまで「一つの体験」であり、診断・治療・投薬をすすめる意図はありません。不調や悩みを感じた際には、医師や専門家のサポートを受けてください。

それでも、同じような感覚や苦しさを抱える方が、どこかで「自分だけじゃない」と思えたり、ほんの少しでも、心がゆるむきっかけになれば──そんな願いを込めて書いています。

必要なところだけ、必要なタイミングで、どうか無理なくお読みください。




  • この記事を書いた人
藤次郎Tojiro

Tojiro

子どもの頃、家でジャンプが出禁になっても、『銀牙』や藤子作品だけは読み続けていた。あの頃の“物語の匂い”が、ぼくの根っこをつくっている。 うつとの長い旅を経て、“こころの余白”の大切さを知った。いまはドラマ『相棒』を中心に、気持ちの揺らぎや、語られない沈黙、痛みのレイヤーを、そっと読み解いている。原点の作品を行き来しながら、人が立ち上がっていく物語を、静かに追いかけています。

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