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🍁紅葉の井の頭公園で育まれた、焼き芋と恋の物語

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🍁紅葉の井の頭公園で育まれた、焼き芋と恋の物語

風花

明日は、再開の日。
待ちきれなかったの──逢いたくて、走り出した秋 神社の石段に舞う紅葉と白装束。
恋に染まった風花が、胸を焦がして駆け出す。



風花

神社の休憩時間に、下見のために、そっと駅まで抜け出してきた風花。
彼の姿を見つけたその瞬間──胸がとくんと高鳴った。


藤次郎

吉祥寺駅に到着。
けれど、これから会う彼女は、まだ知らない。



藤次郎

コーヒーは、ふたりぶん。
いっしょに飲めたらいいなって、思って……。



風花

「……わたしも、もつよ?」
すっと差し出されたその手に、秋の風がふわりと吹いた。




落ち葉がカサコソ鳴るたびに、ふたりの靴音が、寄り添って響いた。

井の頭公園の池のほとり──
肩を並べて歩く秋の午後。

彼は、風花の右側にいて、
ポケットに入れていた焼き芋をふたつ取り出す。

「ほら、あったかいうちに食べよ」

ベンチに腰を下ろすと、ほわりと甘い香りが立ちのぼる。
秋の空気に、やさしくとけるように。



風花とふたり

「さっき、“あちっ”って言ってたもん」
「えっ!? 見てたの……?」
恥ずかしさとぬくもりが、ひとつになった。



「ふぅ……あちっ」

彼が指先をふっている横で、
風花が一口かじる──

「んふふ……あちぃっ!」

ふたり、顔を見合わせて笑った。
笑い声が、風にのって舞いあがる。

その時。

「──あっ、あそこ見て!」





夕暮れ、寄り添うふたり

あっ、あそこ見て──突然立ちあがって、池の方へ小さく駆け出した。
スカートのすそが、紅葉の風にひらりと踊る。



「カモさんたち、ぐるぐる回ってる〜!かわいすぎっ」

彼が立ちあがると、風花はくるりと振り返って、
いたずらっ子みたいに手招きする。



風花が振り返って呼びかける

「ほら、早く〜っ!」
その声が、秋の空に跳ねた。



夕暮れ、寄り添うふたり

寄り道ばかりの午後だった。
それが、ふたりにはちょうどよかった。


まるで、季節の魔法に連れ去られるように──
ふたりはまた、並んで歩き出した。

寄り道ばかりの、秋の午後。
でも、それが、いちばんたのしい時間だった。





藤次郎Tojiro

Tojiro

亀仙人のじっちゃんのお下劣シーンによって母親によって”少年ジャンプ禁止令”が通達。辛い少年時代を送るも後に解禁。『銀牙 -流れ星 銀-』『藤子不二雄』作品など“健全”な作品は”検閲”を通過。むさぼるように読む。現在は『ドラゴンボール』『相棒』などを心の支えに、日々ウェルビーイングな暮らしを模索中。うつとの長い付き合いもあり、「心を整える力」の大切さを実感しながら、 漫画・アニメ・心理学を横断するブログを運営中。心の修業はこれからも続く。

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