
──人生を動かしたのは、マニュアルには載っていない“対話”だった
実務家として、事務所の看板を掲げて、はじめて分かったのは、「法」や「制度」は、たしかに大切。でも、僕が関わるのは“目の前の人”であり、“制度を説明する””どの法律のどの条文に当てはめて”ではない、という現実。
とくに、家族に関わる案件では、手続きよりも、まずは「聴く」ことが大事だった。
相談者は、まず、心の重さに苦しみ、苛まれ、そこに戸惑っていた。だから、僕は思った。「法の知識」はあくまで道具だと。必要なのは、“人と向き合う力”であり、”人の心を丁寧に扱う技術”なんだと。

ときには、カウンセラーのように話を聴き、ときには、冷静に状況を見つめ、ときには、「ここまで来られただけで、すごいことですよ」と、ただ、労うだけのときもある。
はじめて気づいたのは、僕がこの道を選んだ意味は、「制度を使う」ことではなく、“制度を通して人を支える”ことなんだということを。
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しかし、そんな僕自身も、再び“支えられる側”になる日が。──うつ病との、長い長い対話の始まり。
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第5章『うつ病という「終わり」──そして、「再起動」が始まった』
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