踊る大捜査線 織田裕二

『踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル』は“未来のおもちゃ箱”だった──笑っていたら新城も鏡恭一も須川圭一も、あの人もいる

2026年9月14日

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『踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル』は“未来のおもちゃ箱”だった──笑っていたら新城も鏡恭一も須川圭一も、あの人もいる

2026年9月14日


踊る大捜査線


年末の湾岸署は、最初から最後まで大騒ぎ


『踊る大捜査線』は、コメディである。

なかでも『歳末特別警戒スペシャル』は、
かなり特別だ。

青島俊作は湾岸署に、戻っているはずだった。
警視庁警務部人事課から
すでに人事発令されていた。
杉並北警察署が見落としていたため、
約3ヶ月遅れで、湾岸署に戻ってきたのであった。


そんなこともあって、
湾岸署に戻ってきた青島俊作だが、

歓迎されるどころか、
各課長が集まって、
「青島をどこへ配属するか」を話し合っている。

人手不足だから、
当初はどの部署も欲しがる。

ところが神田署長が、


「来たのは、青島くんだよ」


と言った途端、みんな黙る。

理由もひどい。


「あいつは、正しいことばかりするから……」


これだけで、
青島俊作という刑事がだいたい分かる。

余計なことに気づく。
黙っていればいいことに首を突っ込む。
そして、正しいと思ったことを本当にやってしまう。

組織にとって、非常に扱いにくい男なのである。


青島をどこへ押しつける?


会計課へ配属しようとすれば、


「会計処理を青島に見られたら……」


そして、


「署長のカラ出張がバレます!」


生活安全課なら、


「薬や拳銃を扱っていますし...」
「湾岸署で銃撃戦が始まります」


広報課なら、


「あの軽くて薄い男が、湾岸署の顔になったら、イメージダウン間違いなしです」


もはや配属会議ではない。

湾岸署の秘密暴露大会である。

結局、青島は交通課へ。
そこには柏木雪乃もいる。

恩田すみれは青島に、


「いっぱい、いるわよ~。ミニスカポリス」


こういうしょうもない会話を
大真面目にやる。

それが『踊る』である。



そして、この青島の異動をめぐる騒動には、
もうひとり後の『踊る』につながる人物がいる。

このとき室井の部下として杉並北署へ向かった一人が、
高橋克実さん演じる内田晋三。
当時はまだ髪も健在である。
まさか約10年後、
公式スピンオフの主人公になるとは誰が思っただろう。


室井2号、新城賢太郎


ところが、この特別編。
笑って見ていると、
後の『踊る大捜査線』シリーズにとって重要な人物が、
次々と出てくる。

そのひとりが、新城賢太郎。

新城は室井慎次について、かなり辛辣だ。
室井が所轄と距離を縮めた結果、


「青島という刑事は?優秀だそうだな。室井さんからそう聞いている。田舎の猿がそう言ってるってことは、使えないってことだ」

「室井さんには迷惑してる。所轄と仲良くしたから、最近は下っ端が大きな態度で勝手なことばかりする」


と不満を漏らす。

すみれはそんな新城を、


「室井2号ね」


真下は、


「2号機は、初号機よりパワーアップしてますよ」


と評する。

初登場からひどい。

しかし、その新城と室井の会話には、
後の作品まで残る重要なものがある。

新城は、組織捜査を邪魔するものは排除すると言う。

室井は返す。


「お前が実現したいのは、階級差別の徹底だろ」


そして青島について語る。


「青島という男はな。途方もなく強い信念をもつ男だ」

「俺たちキャリアの傲慢を撃ち抜くぞ」


ずっと後になって、
この会話が室井慎次の物語の中で再び響く。

『歳末特別警戒スペシャル』は、
コントのように笑えるだけの作品ではない。

その後の人物たちを作る種が、
そこらじゅうに落ちている。


「山田太郎、3つ」の男


そして鏡恭一。

青島に名前を聞かれて、「山田太郎」
年齢を聞かれて、「3つ」
人を殴った理由は、「髪、さわったから」
髪のセット時間は、「3時間」

何なんだ、この男は。

ところが、ここから急激に空気が変わる。
鏡恭一はやがてライフルを奪い、
湾岸署刑事課を占拠する。


「偉い順に殺してやる」


と言われた途端、神田署長は、


「わたしも一般人です」


さらに袴田課長が署長を指さすと、


「課長の神田でございます」


肩書きを捨てた。

早い。

危機管理能力だけは異常に高い。
いや、逃げ足が早い。


一方で、鏡恭一という人物そのものは、
これで終わらない。

後に『THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』で再登場する。

そして『歳末特別警戒SP』に登場した小学校の卒業制作、
「宇宙の邪悪と癒し」という
妙に壮大な名前のオブジェまで含めると、
後から見返したときの味わいはかなり違ってくる。


生意気な小学生まで未来につながる


さらに須川圭一。

ピーポくんの着ぐるみを着た青島に、


「空飛べよ 光線出してみろよ
なぁんもできねぇのか だっせぇ」


と絡んでくる、生意気な小学生。

青島は柔道技をかける。

この時点では、ただのコントである。

ところが、
この須川圭一も『THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』では
主犯(ノライヌ)としてつながっていく。

TVシリーズ第1話でも登場し、
あいかわらずの生意気な小学生が、
何年も経ってから別の意味を持って戻ってくる。
これが『踊る』の面白さでもある。


真下はSATを見て大興奮


湾岸署で立てこもり事件が発生し、
SATが投入される。

真下は、


「うわさの特殊急襲部隊が見れる」


と、妙にうれしそうだ。

SATが突入。

ガラスを破る。
閃光弾を投げ入れる。
室内が暗くなる。
制圧。
撤退。

一瞬で終わる。

すると真下。


「特殊急襲部隊だ……」


憧れの顔。

とっくに撤退したSATを見たいがために


「特殊急襲部隊どこ行った?」


よく見ると一眼レフまで持っている。
完全に観光客である。

後に『交渉人 真下正義』の主人公になる男とは思えない。
いや。だからこそ、
真下正義なのかもしれない。


踊る大捜査線

やっぱり、これが『踊る』なのかもしれない


『歳末特別警戒SP』は忙しい。

事件が起こる。
横で恋愛話をしている。
署長たちがくだらない相談をしている。
青島は勝手なことをする。
新城は怒る。
室井は理想を語る。
真下はSATに夢中になる。
雪乃は怒る。
袴田課長は、青島をかばった直後に気絶する。

人が多い。
話があちこちへ飛ぶ。

でも、それぞれが
同じ湾岸署の中で同時に生きている。

このごちゃごちゃ感こそ、
『踊る大捜査線』だったのかもしれない。

新作も、多くのキャストとエキストラが
参加する大きな作品になるという。
どんな映画になるのかは、まだ分からない。

ただ、『歳末特別警戒SP』を久しぶりに見ていたら、
「ああ、もしかすると、またこんな“人だらけの踊る”が見られるのかな」
そんなことを少し期待した。

深い人物考察はいったん横に置いて。

笑って、ツッコんで、
気がついたら
未来への伏線まで拾っている。

そんな見方ができるのも、
『踊る大捜査線』の楽しさだと思う。

そして現在、
FODでは『歳末特別警戒スペシャル』を
見ることができる。

新作公開前。

久しぶりに、
年末の湾岸署へ戻ってみるのも悪くない。





👉 【次回】『警護官 内田晋三』髪は消えても、室井慎次の思想は残った──6分15秒のスピンオフ



👉 【前回】織田裕二さんに求める「沈黙」──青島俊作の“正義”を、作品の外から語り過ぎる危うさ






  • この記事を書いた人
藤次郎Tojiro

Tojiro

うつと約20年。話すよりも書くことが自然で、いつも言葉を綴ってきた。 子どもの頃から作文や日記が好きで、高校では論文で男子唯一の入賞。2004年からブログを書き、法務職として民間と官公庁の双方で文書を作ってきた。 家族の介護・看取りを経て、今は『相棒』『踊る大捜査線』、織田裕二さん主演作品を中心に、制度のひずみや、善意が無自覚に人を傷つける構造を読み解いている。 “空気”に流されず、“当たり前”とされていることを疑い、自分の頭で物事を考える力を養えるブログを目指している。 『踊る大捜査線』ネットワーク特別捜査員(6234番目に配属)

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